わたしはわたしを守る。わたしを守るために、わたしの殻を守る。わたしの殻を守るために、化粧をする。服を着る。服を選ぶ。清潔で目立たない服を入念に選ぶ。二度とあんな目に遭わないように。人目につかない地味な服を。曇り空のようなニットを。真っ暗な夜のようなスカートを。泥濘のようなシューズを。そして舌先に、ピンク色の飴玉をひとつ。生き延びるためにふつうを目指していたのに、あなたはそれを、愛されようとしていない証拠だと言いました。貝印の剃刀が結局いちばん痛くないし派手に血も出る。腕を切る理由は、死にたいからだとか、罰を受けたいからだとかじゃなくて、脳内でベータエンドルフィンとセロトニンが分泌されて、ただただ身体が気持ちよくなるから。調子はどうですか。元気に暮らしていますか。あなたはもうわたしのものにはならないから、せめて、わたしに消えない傷をつけてほしかったなと、窓の外に流れる5時のサイレンを聞きながら、ぼんやりと思っているところです。

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日記101

10/17
仕事。会議。22時頃帰宅。
実家へ帰宅すると、大皿の料理が置いてあって、胃に入りきるまで過食してしまった。強くストレスがかかると過食してしまう。吐き気を催しながら寝た。夜中に目が覚める。前に朝までぐっすり眠れたのはいつだっけ?

10/18
今日も朝、目が覚めても体が動かない。会社に連絡して仕事を休んだ。昼食用の弁当と昨日の大皿料理の残りをまた身体に詰め込んだ。嘔吐した。

そんなこんなでなにもかも嫌になったので、高速バスに乗ってずっと遠くの方へ行った。高速バスは障害者手帳で半額で乗れるので、使う機会を伺ってはいたけれど、それが今日じゃなくてもいいんじゃないかという気はした。でも使った。もうずっとどこか遠くへ行きたかった。
自分が住んでいない街のカフェでコーヒーを飲んでケーキを食べた。午後いっぱい、そこで過ごした。時々豆を挽く音が響く、居心地のいい落ち着いた店だった。

色々なことを思い出す。「幸せになってね」という言葉が、いちばんお腹にずしんとくるなと思ったこととか、「オフの日くらい人間をやめたい」って言ったこととか。においとか、感触とか。

充たされたような、注がれたような思いで帰った。この体の中に入った新しい水みたいな気持ちも、どんどん濁っていくんだろうな。でもせめて、今だけは。
行く道では晴れていたけれど、帰り道では雨がバスのフロントガラスを強く打った。

とにかくいまは、働いている理由がほしい。インスタントでも冷凍でもいいから理由がほしい。でも適切な理由じゃないと、まずい給食みたいに口から吐き出してしまうと思う。

彼女と話し合いの電話。

10/19
彼女と話し合いの電話。
仕事を休んだ。

10/20
仕事を休んだ。
不調が続くので、上司と短く電話で話し合った。

10/21
引越しの荷物の受け取りと、インターネットの開通作業の立会い。少しだけ荷ほどきをして終わり。こんなこと、なんのためにやっているんだろうか。引越すためか。じやあなんで引越そうとしているんだ。

10/22
過食。
寝込んでいる。

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違う世界

季節外れの雪が降り始めました。古いテレビの中の気象予報士は、雪が二度と降りやまないことをしきりに説明をしていましたが、キャスターも、アシスタントも、信じがたいように首を捻っているだけでした。二週間も経つと、そのテレビも映らなくなりました。画面には音の無い灰色の砂嵐が踊るばかりになりました。わたしは家の中でごわごわとした毛布を被り、貯蔵庫の中にあるものを少しずつ食べて暮らしました。時々、吹雪の夜には、大人たちの苛立った声が聞こえ、時々、粉雪の朝には、子どもたちの歓声が遠くで聞こえるような気がしました。あなたは既にこの街を去っていました。きっと、この街を去ることを選んだあなたが正しかったのでしょう。間違えてしまったわたしは、この街の多くの人と同じように、このまま少しずつ死んでいくのでしょう。貯蔵庫の食料は確実に減っています。馬車の馬すら殺して食べなければいけない時代が、すぐそこに迫ってきているのなら、あとにやり残したことなんて何があるというのでしょうか。あなたを愛していると伝えないでほんとうによかった。あなたがこの街を去ってほんとうによかった。

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はなつみ

罪の意識が芽生えるより前から、既にわたしは暗い穴の底に落ちていました。その穴のことを他人が恋と呼ぶことを知ったのは、それからずっと後のことでした。落ちたわたしは足を挫きました。そうして、手の届かない日なたの世界を、じっと見上げる日々が始まりました。時々、穴の中へ、しとしとと雨が降り注ぎ、冬になると毎晩、月の輪郭が穴から顔を覗かせました。長い時間が経ちました。長い時間が経ったはずでした。それでも、いまでも、わたしは穴の中で、地の底を這って暮らしています。芽生え、育ち、今ではこの暗い穴を覆い尽くすほど茂った罪の意識といっしょに暮らしています。罪の意識は夏の朝に花を咲かせ、それは色の抜け落ちたアサガオに似ていました。罪の意識は秋の夜に香り、それは金木犀の恥じらいに似ていました。ここには、あなたも、あの子もいない。わたしと、わたしのつくった美しい植物だけが、息をひそめ、息づいています。

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夢の中の廃墟にて

夢の中で、わたしは、テーマパークにいました。それは、以前に住んでいた街からほど近い場所にあるようでした。以前に住んでいた街とは、かつて夢の中のわたしが住んでいた街、ということだったのかもしれません。あるいは、以前に住んでいた街というイメージすら含まれた、今夜の夢だったのかもしれません。
アトラクションが終わる前に夢から醒めました。その夢の輪郭がはっきりしすぎていて、現実のわたしは、現実のわたしが、かつて住んでいた街のことを思い起こしました。その街で育んだ愛と、その街で抱いた憎悪を思い出しました。唇を噛むような思いも、臍を噬むような思いも、全てを込めてあなたの首筋に立てた爪の跡を、思い出しました。でも、それは、今では綺麗さっぱりなくなっているのでしょう。残り香だけが、わたしの身体の中でマーブル模様になって、ゆるゆると流れ続けているだけです。
あなたは今も、夜中に目を覚ましては、キャンバスに向かって絵を描いているのでしょうか。わたしは、今ここで、生きています、言葉を綴いでいます、それだけは証明することができるでしょうか。

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ほんとのような、うその話。

わたしは青い。青いままの部分がある。それは身体の一部の痣のようでもあり、渋いまま地面に落ちてしまった果実のようでもあります。猿が手を伸ばしてきて、一口齧っては捨てていく。そんな経験をこれまでの人生で何度もしてきました。これまでの人生なんていっても、そんなに大した時間は経っていないのですが、既にわたしは老婆のようでもあり、少女になる前のほんの小さな肉塊のまま、何も変わらないままでいるような気もします。いま、季節は秋で、今日はどこにも行く宛がなくて、閉じたままのカーテンがそよそよと揺れて、西陽がだんだんと傾いていくのを感じます。強いお酒を飲みほしたいとか、煙草をくゆらせたいだとか、可愛い服を着たいだとか、そういう欲求がかつてわたしの身体の中にあって、少しずつ消えて無くなっていきました。それでも、あなたのことだけは、ずっと頭から、心から離れません。わたしは、あなたに話しかけています。わたしは、あなたに見つけてほしいと願っています。憎まれても、蔑まれても、もう一度だけでもいいから、あなたの脳に走る電気信号になりたいし、願わくばあなたの海馬の奥に用意されたアンティークの抽斗に、少しの間でもいいから収まっていたいのです。

日記100

10/11
つらくてどうしようもなかったので、仕事を休んでしまった。
ずっと寝込んで、夕方から大量の酒を飲んだ。

10/12
仕事。
歓送迎会で大量の酒を飲んだ。

10/13
仕事。

10/14
新居(空き家)のネット回線の契約。

一旦家に帰って、銀杏BOYZの「恋は永遠」を聴いて、ぼろぼろと泣いてしまった。特に、このMVで可憐にストリップを舞うお姉さん。そして、踊り子のお姉さんに愛情の籠もった視線を注ぐおっさん。だっさい表拍の手拍子。タンバリン、テープ投げ。(これらはストリップ劇場の応援の仕方の"文化"らしい。)俺もゆくゆくは、このMVのおっさんみたいになるんだろう。だって恋は永遠なんだから。そんなことを思った。

https://youtu.be/xm6cm49PSW4

ストリップ劇場については、以前から、漫画家のたなかときみさんが熱心に描かれていたので、MVの題材として使われたのも良かったと思う。ちょっと行ってみたくなった。
https://note.mu/tokimitokimi

散髪に行った。東京の好きな美容師さんにやって貰えなかったので、若干思ったのと違う仕上がりになったけど、少しさっぱりした。

彼女から話し合いたいという連絡があり通話。
2時間後に終了。就寝。

10/15
引越しを進める。
兄と義姉といっしょに家具屋と家電屋をまわった。
一日中付き合ってくれたし、今後も何回か週末に手伝ってくれると言ってくれた。ありがたい。
家電を買うときに「家族が増えたらこれくらいのサイズは必要かな」ということをしきりに言われて胸が痛かった。めちゃくちゃ出費したので、懐も痛かった。クゥーッ!

工藤ちゃんが大阪に来ているはずだけどそんなこんなで会えなかった。残念だから動画だけでも貼っておこう。
https://youtu.be/atV3-ssPisE


10/16
仕事。相変わらず仕事の状況はめちゃくちゃしんどい。今年度は厳しいと分かっていたけれど、ここまでか。前向きになれる要素が一つも無い。大森靖子のライブしか!大森靖子のライブしか、無いんだけど!

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