日記32

10/8
飛行機が苦手だ。

あんなに重い機体が空を飛んでいるのが理解出来ないし、どこかの山中に飛行機が墜落しましたというニュースが年に一度はテレビ画面に躍る。

離陸前に、もし酸素が必要になったら、救命胴衣が必要になったら、みたいな説明をされている時には、いやいやそうなったらワシらみんな死んでますやんーという気持ちになる。だから、飛行機に乗る時は死を覚悟して乗ることになる。ある種の臨死体験だ。初めて乗った時は、思ったより揺れるしごうごうと音が鳴ってうるさいんだなと思った。乗る度に今もそう思う。

死ぬ時はせめて大森さんの歌を聴いていたいわと思って、iPhoneに入っている「ピンクメトセラ」を再生すると、思いの外情景にハマった。逃猫ジュレが「リンシノモリ」で彷徨うアニメ(予定された放送期が過ぎてもいっこうに公開されないんだけど、スタッフみんな逃げたの?)のテーマソングだから、臨死体験というキーワードで一致している。
死ぬかもしれないクレイジーな乗り物を使って、日常からしばし、全力で逃げようとしているのだ。というわけで大森さんのライブを見に長崎へ飛んだ。

高度が高くなると、気圧で耳が詰まってきて、「ピンクメトセラ」はトーンを絞ったような音像でしか聴こえなくなってしまった。眼下に広がる海が綺麗だった。

長崎は大雨だった。
視界不良のため着陸を一度やり直すことになり、高度を改めて上げている時に近くの席の若い男性が突然気絶して、隣に座っていた女性がCAさんに早く来てくれと叫んでいるのに、CAさんは上昇中なので動かないでください(なので私も行けません)と返事するし、ああやっぱり俺はこの飛行機で死ぬんだと思っていたけれど、なんだかんだ無事に着いた。気絶した人は2分くらいで目覚めて、え?大丈夫ですけど?みたいな顔をしていた。はた迷惑な奴め。ハッハッハ。

ホテルにチェックインしてから、雨合羽を被って、大森さんのライブ会場に向かう。飛行機到着遅れのため、大雨の中、転ばないようにできるだけ急ぐ。

海と路面電車の近くに、会場の「旧香港上海銀行長崎支店記念館」はあった。

かつて銀行の窓口だったであろう大きな長机の内側に、グランドピアノとマイクが設置されて、今日も100席ほど設置されていた。整理番号が良くて、最前列の端に座れた。

インディーズ最後のワンマン「海へ行こうよ」以来の、長崎での大森さんのライブ。

文化財」という面で共通しても、秋田の酒蔵とは方向性が全く違った。土壁と木造という違いもあるだろうか。音響も今日は柔らかく優しく響く感じがした。秋田で音楽そのもののように感じた大森さんを、今日はすごく一人の人として感じられた。世界が水没するほどの大雨に包まれたこの場所で、なにか密やかで、特別なことが行われているような気持ちがした。

ライブが終わったあとは、(東京在住の人を中心とする)ファン同士の飲み会に参加した。大人数だったけれど、顔見知りの人が多かった。「宝雲亭」の一口餃子は、やめられないとまらないの勢いでそりゃあもう美味しかった。

ホテルに帰って、ゆっくり入浴してから寝た。

10/9
支度をして、トルコライス発祥の店「ツル茶ん」に行ってみたけれど、朝からあんなボリューミーなものは食べられないぞと悟り、モーニングセットとミルクセーキを貰った。
その後、路面電車に乗って駅前まで行き、「岩崎本舗」の角煮まんじゅうをひとつつまんでから高速バスに乗車。

数時間で別府に着いた。

昨日に続いて、今日は別府「ブルーバード劇場」での大森さんのライブだった。大森さんと旧知の仲のごうくんが企画担当をしている。

映画館でライブをするのが好きだ、ここは「京都みなみ会館」に似ているとMCで言ってくれたのが嬉しかった。みなみ会館はとても好きな映画館なので。

この日は、関西在住者を中心とするファンと飲んだ。とり天が美味かった。

宿へ帰って、貸切湯に浸かる。
熱めの温泉に足をつけると、普段は何も感じない両足に、とくとくと血が巡るような感覚がした。毎日温泉に浸かって湯治をしたら、麻痺も良くなるだろうか。

和室に敷かれたふかふかの布団で就寝。

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