はなつみ

罪の意識が芽生えるより前から、既にわたしは暗い穴の底に落ちていました。その穴のことを他人が恋と呼ぶことを知ったのは、それからずっと後のことでした。落ちたわたしは足を挫きました。そうして、手の届かない日なたの世界を、じっと見上げる日々が始まりました。時々、穴の中へ、しとしとと雨が降り注ぎ、冬になると毎晩、月の輪郭が穴から顔を覗かせました。長い時間が経ちました。長い時間が経ったはずでした。それでも、いまでも、わたしは穴の中で、地の底を這って暮らしています。芽生え、育ち、今ではこの暗い穴を覆い尽くすほど茂った罪の意識といっしょに暮らしています。罪の意識は夏の朝に花を咲かせ、それは色の抜け落ちたアサガオに似ていました。罪の意識は秋の夜に香り、それは金木犀の恥じらいに似ていました。ここには、あなたも、あの子もいない。わたしと、わたしのつくった美しい植物だけが、息をひそめ、息づいています。